GNAT のコンパイル，メイクには，gcc と 一つ前のバージョンの GNAT と GNU make が必要になります．GNAT をインストールするのに GNAT が必要というのも変な感じがしますが仕方ありません．一つ前のバージョンを持っていないので，最初に最新バージョンの GNAT のバイナリパッケージをインストールします．
　以降の解説はバイナリパッケージが /usr/local 下にインストールされている前提で行われています．インストールパスが違う人は注意してください．

　バイナリパッケージのインストールについてはこちらを参考にしてください．

　GNU make のインストールについては，WWW 検索で解説ページを見つけてください．

　無事バイナリパッケージがインストールされたなら，ソースコードをダウンロードしましょう．バイナリパッケージをダウンロードするついでにソースコードもダウンロードしておくのがいいでしょう．

ftp://wuarchive.wustl.edu/languages/ada/compiler/gnat/

ftp://ftp.cdrom.com/pub/languages/ada/compiler/gnat/

ftp://cs.nyu.edu/pub/gnat/

　ここからダウンロードしましょう．このディレクトリから distribに移動し，（移動しなくていい場合もあります）gnat-3.11p-src.tar.gz（バージョン番号は最新のものに置き換えてください）をダウンロードします．ファイルサイズが約 3.5MB ですから，空いているときにダウンロードしましょう．

　リファレンスマニュアルなどが必要な人はついでに gnat-3.11p-docs.tar.gz（ 950KB ほどです）もダウンロードしておきましょう．

　GNAT のソースコード以外にも gcc のソースコードが必要です．gcc のソースコードをダウンロードしましょう．
　C++ コンパイラも必要なら，libstdc++, libg++ のソースコードもダウンロードしましょう．

gcc 2.8.1 ( 8.4MB )
ftp://ftp.iij.ad.jp/pub/GNU/gcc/gcc-2.8.1.tar.gz
libstdc++ 2.8.1.1 ( 830KB )
ftp://ftp.iij.ad.jp/pub/GNU/libstdc++/libstdc++-2.8.1.1.tar.gz
libg++ 2.8.1.1a ( 750KB )
ftp://ftp.iij.ad.jp/pub/GNU/libg++/libg++-2.8.1.1a.tar.gz

　上記の他にも GNU ソフトウェアの FTP ミラーサイトは沢山あるので，空いているところやネットワーク的に近いところからダウンロードしましょう．

　ダウンロードしてきたファイルは圧縮ファイルなので，解凍します．
　ここでは gzip, gunzip など圧縮関連のソフトウェアがインストールされていることを前提とします．インストールされていないなら，インストールしましょう．方法は WWW 検索で容易に見つけることが出来ます．

% su

　普通は make install の手前までは一般ユーザで作業するのですが，make install 中に新規のファイルを作ったりするので，最初からスーパーユーザになっておきます．

# cd /tmp2

　この解説では全てのソースを /tmp2 の下に展開することにしますので，/tmp2 に移動します．

# gtar -xzvf gnat-3.11p-src.tar.gz

　gtar は GNU tar です．/bin/tar と区別するためにコマンド名を変更しています．もし，GNU tar がインストールされていないのであれば，以下のコマンドで代用できます．

# gunzip -cd gnat-3.11p-src.tar.gz | tar xvf -

　gnat-3.11p-src というディレクトリが作成され，その中にソースコードインストールするファイルがあります．

# gtar -xzvf gcc-2.8.1.tar.gz
# gtar -xzvf libstdc++-2.8.1.1.tar.gz
# gtar -xzvf libg++-2.8.1.1a.tar.gz

　同様の手順でダウンロードしてきたファイル全てを解凍します．gnat-3.11p-docs.tar.gz はインストール後に解凍しますので，ここでは解凍しません．ドキュメントについての解説はこちらです．

　gcc に GNAT の機能を組み込む作業を行います．

# cp -r gnat-3.11p-src/src/ada gcc-2.8.1

　GNAT のソースコードを gcc のソースコードのあるディレクトリにコピーします．

# cd gcc-2.8.1
# patch -p0 < ../gnat-3.11p-src/src/gcc-281.dif

　gcc 2.8.1 に GNAT のパッチを当てます．

# cd ada
# touch treeprs.ads a-[es]info.h nmake.ad[bs]

　先ほどコピーした ada ディレクトリ内で以上の作業をします．

　それでは，gcc をコンパイル，メイクしましょう．

# cd ..
# ./configure --prefix=/usr/local

　gcc のソースディレクトリで configure スクリプトを実行します．インストールパスを /usr/local に固定するので，オプションで指定しておきます．

# gmake CC=gcc CFLAGS="-O2" LANGUAGES="c ada"
# gmake CC=gcc CFLAGS="-O2" LANGUAGES="c ada" bootstrap

　C と Ada のソースをコンパイルできるようにするため，LANGUAGES="c ada" を設定しています．

　ここでのメイク作業は時間がかかるので，昼寝するなり，お茶にするなり，他の仕事をするなりして下さい．（＾＾；

# gmake CC=gcc CFLAGS="-O2" gnattools
# gmake CC=gcc CFLAGS="-O2" GNATLIBCFLAGS="-O2" gnatlib

　GNAT 関連の実行ファイルやライブラリをコンパイル，メイクしています．
　上記の方法では ネイティブスレッドパッケージがインストールされます．最後のセクションで FSU スレッドパッケージもインストールする方法を紹介していますが，普通に使うのであれば，ネイティブスレッドパッケージだけで十分でしょう．

# gmake LANGUAGES="c ada" install
# exit

　make install してインストール作業は終了です．C と Ada のソースはコンパイルできるようになりました．
　作業が終了したので，スーパーユーザから一般ユーザへ戻ります．

　インストール後に環境変数の設定を行って下さい．バイナリパッケージインストール時に設定しているなら，そのまま何もしなくて結構です．

　この次のセクションでは C++ ソースもコンパイルできるようにしますが，C++ が必要なく，ここでインストールを終了するのであれば，こちらを見てください．

　折角ソースコードから gcc をインストールしたのだから，C++ ソースもコンパイルできるようにしておきましょう．C++ を使わないのであれば，このセクションは無視して下さい．

　注意：GNAT インストール後に新規に圧縮ファイルから gcc のソースディレクトリを用意した場合，必ず configure 前の準備作業を行い，configure スクリプトを prefix オプション付きで実行した後で以下の作業を行って下さい．

% su
# cd /tmp2/gcc-2.8.1
# gmake CC=gcc CFLAGS="-g -O2" LANGUAGES=c++
# gmake CC=gcc LANGUAGES=c++ install

　gcc のソースディレクトリに移動し，C++ 用にメイクします．
　以上で，C++ ソースをコンパイルする機能が組み込まれましたが，ライブラリがないので次にライブラリをインストールします．

# cd ../libstdc++-2.8.1.1
# cp -r ../libg++-2.8.1.1a/* .

　libg++ のファイルを libstdc++ ディレクトリにコピーします．

# ./configure --prefix=/usr/local

　インストールパスを /usr/local に設定して，configure スクリプトを実行します．

# gmake all
# gmake install
# exit

　gmake all で標準 C++ ライブラリと g++ 用ライブラリをメイクします．その後インストールします．

　後はインストールしたライブラリのあるディレクトリ（ /usr/local/lib あたり）をライブラリパスに追加しておきましょう．

　Solaris ではデフォルトでネイティブスレッドパッケージをインストールしますが，FSU スレッドパッケージもインストールできます．大抵はネイティブスレッドパッケージだけで十分なので，必要な人だけ参考にして下さい．FSU スレッドパッケージがいらない場合はこのセクションは無視してください．

　ちなみに GNAT バイナリディストリビューションでデフォルトインストールされるパッケージは Solaris 版がネイティブスレッドパッケージ，Linux 版が FSU スレッドパッケージです．

% su
# cd /usr/local/lib/gcc-lib/sparc-sun-solaris2.5.1/2.8.1/
# rm -rf rts-native/adainclude rts-native/adalib
# mv adainclude adalib rts-native

　バイナリパッケージから rts-native 下にインストールされたネイティブ用ライブラリを削除し，メイクしたネイティブ用ライブラリを rts-native 下に移します．

# mkdir rts-fsu

　FSU スレッドパッケージのインストール先を用意します．バイナリパッケージインストール時にこれらのディレクトリは作成されているはずですが，無いようならば上記のようにして作ってください．

# cd /tmp2/gcc-2.8.1
# rm stamp-gnatlib1
# gmake CC=gcc CFLAGS="-O2" GNATLIBCFLAGS="-O2" THREAD_KIND=fsu gnatlib
# gmake LANGUAGES="c ada" install

　gcc のソースディレクトリに移動します．既にネイティブスレッドパッケージをメイクしているので，stamp-gnatlib1 ファイルを削除しておきます．
　FSU スレッドパッケージをメイクするので，THREAD_KIND=fsu を設定しています．

# cd /usr/local/lib/gcc-lib/sparc-sun-solaris2.5.1/2.8.1/
# mv adainclude adalib rts-fsu

　FSU 用ライブラリを rts-fsu 下に移します．

# cd /usr/local/lib/gcc-lib/sparc-solaris-2.5.1/2.8.1/
# cp libgthread.a libmalloc.a rts-fsu

　バイナリパッケージからインストールされた FSU 用ライブラリを rts-fsu 下にコピーします．

# ln -s rts-native/adainclude .
# ln -s rts-native/adalib .
# exit

　rts-native 下のライブラリを普段使うので，rts-native/adainclude, rts-native/adalib へシンボリックリンクします．